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株式の相続で知っておきたい4つのポイント

被相続人の財産に株式が含まれる場合には、株式も相続の対象となります。不動産や現金、預貯金の相続についてはイメージしやすいですが、株式の相続となると、どのように相続されるか、どのような点に留意すべきか、よくわからない人も多いでしょう。

そこで今回は、株式の相続において重要なポイントについて解説します。

1.被相続人の財産調査

現在ではほとんどの株式が電子化されており、株券を所有していることは稀です。そのため被相続人が株式を所有していたかを調査する必要があります。

その際には、証券会社からの郵便物や、会社からの株主あての通知を探したり、メールの履歴やパソコン、スマートフォンのアプリ等から取引履歴を探したりすることになります。

利用していた証券会社がわかれば、そこに問い合わせることで、保有する株式の種類や数がわかります。もっともそのような書類が見つからない場合や、証券会社を複数利用している場合も考えられます。

そのような場合には証券保管振替機構に登録済み加入者情報の開示を請求することで調査をすることが可能です。

上記は上場株式の場合の調査方法です。これに対して非上場株式については市場で取引がされないため、証券会社や証券保管振替機構への照会では調査できません。

そこで、非上場株式については、被相続人が役員であった等、被相続人と関係のあった会社に直接尋ねることにより確認することになります。

そのため自身が株式を所有している場合には、相続の際の調査が困難にならないよう、関連書類をまとめておいたり、事前に所有する株式についてまとめた目録を作成しておいたりすると良いでしょう。

2.相続人間での株式の共有

相続財産に株式が含まれる場合で、その分割方法が指定されていなかった場合には、株式は相続人の共有状態になります(民法898条)。

共有状態になった場合、株式の権利行使(例えば議決権の行使など)をどのように行うかも重要なポイントとなります。これについては会社法が一定のルールを定めており、株式の共有者が当該株式についての権利行使者を1人定めて株式会社に通知しなければ、当該株式についての権利を行使できないとされています(会社法106条本文)。

権利行使者の指定方法については判例で、共有持分者の過半数による多数決で定める方法が認められています。そのため株式を共同相続した場合には、相続人間で権利行使者を定めなければ、株主総会での議決権行使ができない等の問題が生じます。

このような問題を回避するには遺言書を作成して遺産の分割方法を指定しておき、共有状態になるのを避ける方法があります。しかしこの場合には、一定範囲の相続人(配偶者・直系卑属・直系尊属)が有する一定額の財産を取得する権利である、遺留分を侵害することができないという点に留意する必要があります。

3.株式の評価

株式を相続し、相続税を申告する場合や、遺産の分割協議を行う場合には、株式の財産的価値の評価、つまり株式の価格を決定する必要があります。

【上場株式の場合】

上場株式の場合には日々その金額は変動し、非上場株式の場合には評価の基礎となるべき市場価格がありません。そのため株式の評価方法が問題になります。
まず上場株式についての評価方法については、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)の最終価格によって評価するのが原則です。

ただし課税時期の最終価格が、

①課税時期の月の毎日の最終価額の平均額、

②課税時期の月の前月の毎日の最終価額の平均額、

③課税時期の月の前々月の毎日の最終価額の平均額

の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額により評価されます。

【非上場株式の場合】

次に非上場株式の評価方法については、原始的評価方式と呼ばれる方式によって決定することが原則となります。具体的には評価する株式を発行した会社を総資産価額、従業員数及び取引金額により大会社、中会社、小会社の3つに区分しそれぞれ以下のような方法で評価されます。

①大会社
大会社は原則として、類似業種比準方式により評価します。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株あたりの「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の3つで比準して評価する方法です。類似業種の業種目や業種目別株価については国税庁のホームページで確認することができます。

②小会社
小会社は、原則として、純資産評価方式によって評価します。純資産評価方式は、会社の純資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額相当を差し引いた残りの金額により評価する方法です。

③中会社
中会社は大会社と小会社の評価方法を併用して評価します。

上記の他に、同族株主以外の株主が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず特例的な評価方式の配当還元方式で評価します。

配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。

このように特に非上場企業の株式の評価は専門的な知識も必要とする複雑なものであるため、国税庁の電話相談窓口を利用したり、税理士等の専門家に相談したりするとよいでしょう。

4.相続株式の売却

相続財産の株式を売却して現金化したいと考える方も少なくありません。そのような場合には、まず株式を相続した後に、各相続人が売却をする方法が考えられます。

この方法では相続人が各人で株主名簿の名義書換を行い、その後に、好きなタイミングで売却することが可能です。売却するタイミングや株式の種類等により売却価格に差が生じるため、相続人間で売却価格が異なるという事態が発生します。

この方法は、株式を売却したくない相続人がいる場合に用いられます。

これに対して、相続人の全員が株式を現金化することを望んでいる場合等に多く用いられるのが、相続人のうち1人を代表相続人とし、その代表相続人が一旦すべての株式を相続した上で、名義書換を行い、売却した後に、現金を分割するという方法です。この方法の場合には現金を分割するため相続人間での差異が生じないという特徴があります。

株式の内容等を加味した上、相続人間で協議をし、それぞれにあった方法を選択すると良いでしょう。

まとめ

今回は株式を相続する上での重要なポイントについて解説しました。上述の通り、株式の相続は複雑な問題が多く含まれているため、実際に相続をする際に問題が発生し、相続人間のトラブルに発展してしまうことも少なくありません。

相続でのトラブルは、家族の間に深い亀裂をもたらすこととなり、その修復は非常に困難です。そのようなトラブルを未然に回避するためにも、専門家や、相談窓口を積極的に活用することをおすすめします。また自身が株式を所有している場合には、遺言書や生前贈与などの制度を用いて、相続の際のトラブルを回避することも可能です。

そのため一度自身の財産について見直し、相続対策を考えてみても良いでしょう。

添付の参考資料のほか国税庁HP
国税庁HP 上場株式の評価
国税庁HP 取引相場のない株式の評価
を参照。

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